番外編:世代交代

BajaProg2004にはスウェーデンAnekdotenとイタリアのDeus ex Machinaが出演していた。奇しくもこの2バンドはProgFest'95で世界デビューを果たしている。また、日本のArs NovaもProgFest'95で世界デビューした「95年組」に数えられる。この3バンドにスウェーデンFlower KingsやPar Lindhを加えた5バンドが各地のフェスティバルで引っ張りだこになった、過去10年の売れっ子バンドである。アメリカ勢のSpock's Beard, Echolyn, Mastermindなどは、95年時点ではほぼ同クラスにあり、ヨーロッパにもツアーしていたが、その後は元気がない。
さて、Bajaで見たAnekdotenとDesu ex Machinaはどうだったかというと、両者ともにプログレシーンでの中堅バンドとしてそれぞれの存在感持つまでに成長していた。独自の世界観を貫いているAnekdotenはディティールが繊細になり、相変わらすユニークでプログレファン受けする音楽を奏でる。DxMは、初期の強力なヴォーカリストを活かしたパワフルな音楽から、より複雑な曲構成となりテクニカルでジャージーな方向へと進化した。しかし、両者ともにデビュー当時のインパクトは既になく、今後の10年間の担い手とは考えづらい。このことは、他の3バンドにも同様に当てはまる。
一方、1995年当時に活動が活発化したこの5バンドと同程度のクオリティーを持ち後に続く者は、結局のところ現在に至るまで現れていない。これは、ファンにも業界にもフラストレーテッドなことであり、無意識のうちにも有望な新人を切望する機運がある。フェスティバルで初見の新人バンドのパフォーマンスに感激する、といったことは滅多になくなっている。KBBの演奏がBajaProgで、Arti e Mestieriよりも、Anekdotenよりも、Soft Worksよりも、DxMよりも人気があったのは、実力もさることながらこうした気分によるところが大きい。ではKBBが今後10年間をリードするのか、というとそれはBaja一回ではまだわからない。しかし、大きなポイントと考えられるのはKBBが依然として急激な成長期にある、ということだ。KBBの1作目から2作目のCDへの変化を聴けば、このことに異論はないだろう。海外でもKBBは2作目で著しく進歩した、と見られている。これに対して、上記の5バンドは、世界デビュー時には成長期を終えようとしており、その後の10年は成熟期だった。Baja出場時の評価で、KBBは世界のトップランカー入りした。ポテンシャルは認められたが、その地位に留まれるかどうかは今後のクリエイティビリティーにかかっている。