Arti e Mestieriの輝き

Arti e Mestieri来日公演を観てきた。秀逸なメロディーをスピードとテクニックで十分に表現できた、いいライブだった。特に2日目は。改めて痛感したのは、「バンドは生き物だ」という事実だ。バンドも人間同様、生まれて、学び、育ち、仕事をして、輝き、スランプがあり、失望し、安定し、老い、病み、やがて死を迎える。どの時期のバンドに触れるかによって、その印象はまるで異なる。そして残念なことに、たいていのバンドは好調な時期は長くない。バンドの持つポテンシャルを出し切る最良の状態にまでデベロップすることには多大なエネルギーが必要なので、誰もが全開では走り続けられないように、たいていの場合は持続できないのだ。たくさんのライブに足を運ぶライブファンの醍醐味も、実はここにある。いいバンドがピークの時期にいい演奏をしたときに居合わせる喜びは、何にも代え難いものがある。反対に、再結成バンドの演奏がなべてイマイチな理由もここにある。

レコード会社、プロデューサー、コンサート・プロモーターの仕事の中で重要なものの一つに、この最良のタイミングをつくり出す手助けをしたり、時期を選択することがある。バンドの最高の瞬間を、CDに永遠に記録したり、観客の心に永遠に記憶してもらうために。CITTA'は今回いい仕事をした。最近のArti e Mestieriは、再結成以降最良のコンディションだったことは間違いない。こういう時は、運も見方してくれるもので、バンコの代役で急遽決まった4月のメキシコライブはコンディション調整に確実に役立っているし、ヴァイオリニストの直前の交代(前任者は事故にあったとか)も難無く乗り越えている。ピークの時期に招聘したCITTA'のタイミング選択に拍手を送りたい。特に、残念なことに何回も同じプログレバンドを来日させることが不可能な日本にあっては。