雑感

●NEARfestの運営はとてもスムーズです。カリフォルニアのProgFestは平気で二時間遅れでスタートしていましたが、東海岸のNEARfestのスケジュールはほぼオンタイムです。バンドの選択も、リスナー側の趣味丸出しだったProgFestに比べると、シンフォ、レコメン、ポンプ、メタル・プログレ、スペースロック、エレクトロニクス、フュージョンプログレ、とバラエティーに富んでいて、どんなプログレファンも満足できるような、マーケティングの発想ができています。演奏力が高いバンドが選ばれているのも、質の維持には重要なポイントです。

●そもそも、主催者のロバートはほかのProgDayというフェスティバルのスタッフを経験するという丁稚奉公時代を経てNEARfestを創始しています。ロックだってビジネスなんだから勉強するわけです。こうしてシステマチックに運営されている反面、残念ながらProgFestやBajaProgで感じられるような破天荒jなエネルギーは感じられません。まあ、ビジネスとして安定して続けるためにはいつまでも無茶をやっているわけにはいかないので、仕方ないですが。

●ファンの気質も上品なWASPが多いせいかロスのProgFestやメキシコのBajaProgに比較するとおとなしく、演奏に対するリアクションも控えめです。東京と大阪のお客の違いみたいなもんでしょうか。

●NEARfestはこれまで毎年出演バンドのグレードも上がり(特に2002年のSteve Hakette, Caravan、2003年のCamel, Magma)、会場の規模も拡大してきたのですが、ここにきてスケールアップも一段落したようで、しばらくは現状維持となりそうです。適正な規模が把握できた、というところでしょうか。この点では、まだまだ上昇機運にあるBajaProgのほうが今や格上になってしまいました。ちなみにNEARfest2005の土曜日のヘッドライナーとして既にIQが決定しています。

●NEARfest2004を一言で表現すると、各ジャンルのベストバンドが集まったイベントでした。チェンバーロックNO.1のUnivers Zero、キーボードトリオNO.1のMetamorfosi、メタルフュージョンプログレというあんまりないジャンルのNO.1であるPlanet X、70年代USマイナープログレNO.1のYezda Ulfa、若手スペースロックNO.1のHidra Spacefolk、ザッパ音楽NO.1のMike Keneally Bandなどです。これは予算上の問題から昨年のようなCamel, Magmクラスを呼べなかったために、中堅どころを充実させた結果でしょう。CamelやMagmaは日本でも見ることができるので、個人的には他のバンドが見られて嬉しいのですが、過去二年間に比べると華に欠けることは否めません。

●これまでに日本から参加したバンドは、2002年のGerardだけです。この時は、なかなかウケは良かったです。テクニカルなパワープログレとして受け取られていましたね。主催者はKBBを大分気に入っているようで、2005年の出演はほぼ決まり、といった雰囲気でした。現在のKBBのライブ・パフォーマンスからみて、出演すればBajaProgに続いて大きな反響が得られることは間違いないでしょう。

●ライブ会場に併設してCD即売会場も設けられています。プログレCD専門店が存在せずメールオーダーに頼っているアメリカのファンにとっては、貴重な「CDを見て買えるチャンス」なので、皆熱心にCDを物色しています。ディーラーと出演バンドの出店が主だったところですが、変わったところでは、無名のバンド、ロジャー・ディーンのキャラクターグッズ会社、プログレweb、プログレ雑誌、プログレフェスなどからの出品もあいます。日本からはポセイドンが参加しているのですが、昨年からDisk Unionも中古LPと紙ジャケCDを売っています。ポセイドンCDのファンはコアなファンが多くて、最近はお客の顔を見ただけで買ってもらえそうかどうかわかるようになってきました。

●いつでも誰とでも会える東京と違い、広大なアメリカではフェスティバルがプログレ業界の寄り合いの場みたいになっていて、会期中にはビジネスミーティングがそこここで行われています。このあたりはコンピュータ業界の展示会と一緒ですね。CDレーベルとコンサート開催の両方を運営しているポセイドンにとってはとてもいいビジネスチャンスなので、バンドとの出演交渉、雑誌やweなどへのプロモーション、他レーベルやディストリビューターとの連絡など朝から晩まで埋まったスケジュールをこなしてきました。

●二日間で10バンドも出演すると、全部ガツガツ見なくてもいいや、というお気楽な気分になってきます。というか、朝11時から12時間に渡るスケジュールを全部真剣に見ていたら疲れちゃいます。ということで、****の出演時なんか、知り合いがほぼ全員ロビーにたむろしていて面白かったです。気の合う仲間は趣味も一緒です。もっとも会場内では随分受けていましたけど。