3日目

スタートは静かだった。Tsuboyのヴァイオリンソロが始まっても、まだ海外では知名度が低いKBBを知る観客は少なく、みんな腕組みをして聴いていた。おしゃべりしている連中すらいる。しかし、残りのメンバーが登場してファーストアルバム収録の名曲「Catastrophe」に移ると、明かに会場の空気が変わった。名も知らぬバンドが、ダイナミックな曲を柔軟心得た演奏力で表現していくのに驚き、目を見張り、惹きつけられていくのが鮮明にわかった。

[そして興奮はピークに]
1曲終わる毎にとんでもなく大きなリアクションで、拍手と口笛と歓声が返ってくる。海外の観客ば、知名度ではなく曲や演奏の善し悪しに対する反応が本当に素直で、いい演奏をすると拍手喝采だが、しょぼいとブーイングがすぐ飛んでくる。KBBのレパートリーはシンフォニックな曲、ジャジーな曲、ケルト調の曲など多彩で、飽きさせず、そんな観客を虜にしていく。一つの頂点に達したのは、美しく奏でられる「白虹」が終わった瞬間で、観客数5000人ではないかと見まがうような大きな反響だった。

[世界が認めた日]
本編を短めに演奏してアンコールを受ける。ここまでの予定だった。しかし、興奮した観客が終わらせないのだ。手拍子と「Kee! Bee! Bee!」の声が次第に大きくなり、足踏みも加わって、ホールが壊れちゃうんじゃないかと思うほどの震動だった。フェスティバルのしかもオープニング出演なので、そんなにアンコールに応えているとスケジュールが押してしまうはずだが、演奏しないと暴動が起きそうだ。もう一曲だけ、とアナウンスして短めの曲を演奏しやっと開放される。KBBのみならず新世代の日本のプログレが、世界に認知された記念すべき瞬間だった。その後は、会場の至る所でメンバーが声をかけられ、ほんのちょっとスターになったみたいだった。KBBっていい名前だと初めて思った。アンコールで呼びやすいのだ。