4日目、クライマックスの最終日

アストゥーリアス

アストゥーリアスの出番はトップ。いつもは7時スタートだけど、最終日の今日だけは5時スタート。そのためもあってか、アストゥーリアスの演奏が開始された時点では、ホールは3/2くらいの入りで、静かに演奏がスタートした。

最初、観客は戸惑っているように見えた。アストゥーリアスに対する予備知識は、観客の大部分はないはずだ。エレキバンドばかりのフェスティバルでアコースティック編成の静かなライブは予想外だったのだろう。拍手はお座なりではなく観客に気に入られている手応えはあった。かといってラテン特有の熱狂的なものでもなかった。しかし数曲演奏していくうちに、観客がアストゥーリアスに序々にアジャストしてホールの雰囲気は変化していくのが手に取るようにわかった。心に浸みいるメロディー、緩急に富んだ曲構成、一聴すると地味だが実に高度なアンサンブル、卓越したソロ。ホール全体がアストゥーリアスの魅力にゆっくりと飲み込まれていった。CDを聴いたことのあるお客が来場する国内のライブでは得られない経験だった。バンドに対しても、観客からのレスポンスが明らかにいい方向に作用していた。アコースティック編成でのライブでは最高の出来だったのでないだろうか。拍手が曲ごとにだんだんと長くなり、いつしか歓声や口笛が混ざり、最後は満員になった会場が総立ちの感動的なフィナーレだった。

セットリスト

  1. Wataridori
  2. Distance (Bird Eyes View / Cryptgram Illusion)
  3. Adolescencia (Bird Eyes View / Cryptgram Illusion)
  4. Global Network (Bird Eyes View)
  5. Tempters of Providence
  6. Solo   Piano - Clarinet - Violin - Guitar
  7. Bird Eyes View (Bird Eyes View)
  8. Kagerou (composed by Yoshihiro Kawagoe)
  9. Marching Grass on the Hill
  10. Ryu-Hyo (Bird Eyes View / Circle in the Forest)

Ken Henslay Band

70年代に結成され現在も活動しているイギリスのハードロックバンド ユーライア・ヒープの元リーダー/キーボード奏者であるケン・ヘンズレーは、現在はケン・ヘンズレー・バンドとして活動している。BajaProgにも出演していて、最終日に「七月の朝」や「スイート・ドリーマー」などの名曲を演奏した。プログレフェスだったので、バラードナンバーを中心に演ったのかもしれないが、これがなんともフェスティバルの雰囲気ににマッチしていて、大喝采を浴びていた。ケンはオルガンを中心に、リード・ヴォーカル、ギターと大活躍。独特の音色とフレーズのオルガンが聴けるだけでも感激ものなのだが、渋いヴォーカルもとっても魅力的だった。

最後のトラッドナンバー"Lady in Black"には、ヴァイオリニストの藤本美樹がゲスト参加して、楽しそうにケンのギターと二人でフロントで弾きまくりオオウケだった。むさいハードロックバンドの演奏が一時間続いて、最後になって黒髪の小柄な日本人女性が出てきてバリバリ弾いて締めるのは、ベテランのケンが即興で考えたステージ構成だったのかもしれない。藤本美樹は見事にその役をこなし、Fantasmagoriaとアストゥーリアスでの出演と合わせて、フェスティバルで一番目立ったプレーヤーだったのは間違いない。

このバンドのベーシストはトラで、ヴァイオリンも弾く正式メンバーが家族の問題で来られなかった。ケンが前日のFantasmagoriaのライブを見て、藤本の起用を思いついたらしい。しかし、ケンのライブは、藤本が出演するアストゥーリアスのライブと同日、というか、その直後にある。技巧者揃いのアストゥーリアスでプレーするだけでも重圧なはずだが、それでもケンのオファーを引き受けて立派にこなしてしまったところが偉い。藤本は本番直前に譜面を渡されて、楽屋でアストゥーリアスの大山曜と練習していた。ベテランの大山から伝授された技も役にたったことだろう。