3日目、Fantasmagoria登場

ホテル会場に出演するFantasmagoriaは、アメリカ人プログレマニアの間での下馬評が高かった。Fantasmagoriaは全く無名で聴いた者など誰一人いないのだが、それがかえって好奇心を呼んだらしい。日本のバンドのレベルが高いのは既に知られているし、しかもわざわざ海を渡ってくるのだ。なんだか凄そうではないか。まだ聴いてない幻の名盤に心をときめかす心理みたいなものだろう。ただそれは一部のマニアの間での話。大部分の観客にとっては、他のホテル会場出演バンドに対するのと同様に、夜のライブまでの時間つぶしのために足を向けたに過ぎなかったようだ。

日本だったら真夏のような青い空と強い日差しの下で演奏が開始されると、Fantasmagoriaはほぼ一瞬のうちに客の心を掴んだ。ヴァイオリンがリードする派手な曲構成、流麗なメロディーライン、まだ粗いけど20歳代前半のメンバーによるエネルギッシュな演奏、フロントに藤本美樹を配したステージ。プログレファンにも、地元の音楽ファンにも、どちらにも好まれそうなキャラクターだとは予想したいたが、それを遙かに上回る受けかただった。曲は、デモに収録されている以前からのものと、3月のシルバーエレファントのライブで披露したソリッドなものとで構成されていた。デモではフュージョンっぽく聞こえた曲も、ライブではもっと重くなっていた。1時間のステージをFantasmagoriaは若さに任せて突っ走り、その間に客の反応はヒートアップする一方だった。終わってからが大変だった。楽屋がない野外会場なので、観客はいとも容易にバンドメンバーを掴まえられるのだ。サイン、握手、写真撮影、というお決まりのパターンなのだが、藤本を中心にバンドは一躍人気者になってしまい、一時間くらいは会場から出られなかった。

  1. Crusader
  2. 睡眠-Jin
  3. Aqueous
  4. Over the line
  5. Joanni
  6. Blue rice
  7. Shakespeare
  8. M.N.K
  9. 回廊
  10. Epic

「で、いつフルCDが出るんだ?早く聴きたいよ。バンドもいいけど、藤本美樹は英語で客とコミュニケーションする方法を知っている最初の日本人プログレミュージシャンだね。他のバンドは英単語を3つくらいしか知らないみたいだし。」MuseaのボスBernard。「Fanmtasmagoriaはブライテストホープ」主催者のAlfonso。その他賞賛多数。

演奏技術レベルが高いバンド、アンサンブルかまとまっているバンド、新しいアイデアを提示しているバンドはほかにもいた。でもFantasmagoriaには、あのライブ会場で他の誰よりも客を熱狂させる魅力が確かにあった。若いバンドの世界デビューとしては十分過ぎる出来映えだったことは間違いない。まだデモしかリリースしていないFantasmagoriaを抜擢してくれた、主催者のAlfonsoの英断に感謝。